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研究員コラム⑫ 坪田敏樹先生

バイオ炭の工業材料への展開

研究員コラム⑫ 坪田敏樹先生

 バイオ炭の工業材料への展開


九州工業大学工学部 准教授

日本バイオ炭研究センター 客員研究員

坪田敏樹


 従来、竹は、たけのこの栽培、工芸品の原料、農業資材等に利用されてきましたが、近年においては、管理されずに放置された竹林が、西日本を中心に里山地域で急速に拡大しています。このように無秩序に拡大した竹林は、周辺の植林地、田畑、住宅等、に侵入することで経済的な被害を与え、傾斜地においては降雨により土砂崩れが生じる危険性があり、「竹害」として大きな社会問題となっています。この「竹害」を解決するために、様々な業界の人々が種々の方法で竹を活用することを検討してきました。このようにして取り組まれたほとんどの試みにおいて、竹以外の植物を原料として製造される製品を、技術的には竹を原料としても実現できる結果が得られてきました。それらの竹由来の製品の性能は、竹以外の植物を原料とする製品と比較して同程度であり、良くも悪くもないという結果になります。竹を原料として使用するためには竹を集積する必要がありますが、その集積にかかる人件費は、原料として実用化されている竹以外の植物を集積する費用と比較して高いです。そのため、竹由来の製品は、性能は同程度で価格が高い、という結果となり、竹を原料として利用する技術が広く実用化されるに至っていません。そこで、竹から高付加価値の製品を段階的に取り出して、それらの製品全体で集積にかかる費用を賄うことで経済的に成立する「竹のカスケード利用」を提案しています。この「竹のカスケード利用」の最終段階でバイオ炭を作製し、高付加価値な用途での活用を目指しています。具体的には、バイオ炭から活性炭を作製して、蓄電デバイスの一種である電気二重層キャパシタの電極材料に利用することを目指しています。


 電気二重層キャパシタの蓄電には物理現象である、電気二重層を利用するため、表面積が大きな活性炭が電極材料として利用されています。電気二重層キャパシタは、リチウムイオン電池等の化学電池とは異なる原理で蓄電を行い、急速充放電が可能なデバイスで実用化されて久しいです。蓄えられる電気エネルギーがリチウムイオン電池と比較して圧倒的に小さいこと、繰り返し充電に対する劣化を生じないことが理論上は可能ですが実際には劣化すること、等が課題です。バイオ炭の作製条件を工夫することやバイオ炭を原料として活性炭を作製することで高性能な電極材料の開発を目指しています。

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