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日本バイオ炭コンソーシアム
研究員コラム⑩ 中野勝行先生
バイオ炭と「環境へのやさしさ」
バイオ炭と「環境へのやさしさ」
立命館大学政策科学部准教授 中野勝行
「環境にやさしい」とはいったい何でしょうか?
「環境のことを考えたら、人類は滅亡すべきだ」といった意見を聞くこともあります。自然環境を破壊するのは人間だから、人間がいなくなった方がいい、といった理由だからでしょうか。
ただ、私はあくまで「環境」とは人間のための「環境」だと整理しています。(いわゆる人間中心主義という考え方です)。水俣病や四日市ぜんそくのような公害が明確ですが、環境を大事にすることは人間の健康にとっても重要です。また、生態系の複雑さは、自然のゆらぎに対する頑強性を持ちます。安全な水や安全な空気といった「あって当然」のものは、豊かな自然のおかげです。
さて、バイオ炭はこのような「環境」に対して有用な効果があるといわれています。2021年ごろから私はライフサイクルアセスメント(LCA)の専門家としてバイオ炭の評価に加わったわけですが、バイオ炭に関しては恥ずかしながら現段階で評価しているのは温室効果ガスの排出・除去量といった一側面だけです。本来、LCAでは気候変動への影響だけでなく、水環境(富栄養化)や、枯渇性資源、生態毒性などを評価するのですが。
まずは気候変動対策としてのバイオ炭活用という文脈でデータを収集し、評価を進めていますが、やはり将来は土壌環境や農作物、周辺環境への影響といったデータも評価に組み入れ、生物多様性など多様な環境側面の評価もしたいと考えています。
ただ勉強すればすればするほどこの分野の複雑さを知ることになり、ハードルの高さを実感しています。なかなか一筋縄ではいきませんが、徐々に進めていきたいと考えています。
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