日本バイオ炭コンソーシアム
研究員コラム⑤ 須藤重人先生
バイオ炭の土壌への貯留とJ-クレジット
バイオ炭の土壌への貯留とJ-クレジット
日本バイオ炭研究センター客員研究員 須藤重人
(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境研究部門
気候変動緩和策研究領域緩和技術体系化グループ長)
GHG(温室効果ガス)削減手法を導入した営農手法への誘導は、カーボンオフセットクレジットの活用が有効です。このことをオフセットクレジット取引といいます。日本国における政府が運営するカーボンオフセット取引の仕組みがJ-クレジット制度です。人口減少が現実のものとなった我が国においては、農業活動現場でのGHG削減活動に対して多額の政府補助金を拠出し続けることは財政面に困難です。一方で、GHG削減にむけた市場形成は急速に進みつつあり、適切なGHG削減営農活動に対して、GHG排出量の多い民間企業が自社排出量のオフセット手段として、お金を支払い、排出量を売買することは、削減側、排出側両者にとって合理性があります。農業分野では、2023年12月現在で、6件のJ-クレジット制度方法論があります(表1)。農業(Agriculture)という意味のAGを頭文字にし、AG001~AG006という番号付けです。このうち、003までの3件は、J-クレジット制度発足前のJ-VER制度時代から存在した方法論であり、004、005は2020年以降に新たに作成されたものです。バイオ炭による土壌炭素貯留に関する方法論は4番目の方法論で2020年に成立した比較的新しいものです。ゼロエミッションをめざす我が国の施策の中で、農業分野においては、「みどりの食料システム戦略」が策定され、2050年においては農業分野の排出量ゼロをめざしています。新規に作成する方法論については、わが国の温室効果ガスインベントリに反映しうるプロジェクト活動をJ-クレジット制度とする基本方針がある。これにより、方法論の策定基準は厳格化しています。
J-クレジット制度WEBサイト
表1 現行のJ-クレジット制度方法論(農業分野)
方法論No. | 方法論 |
AG-001 | 牛・豚・ブロイラーへのアミノ酸バランス改善飼料の給餌 |
AG-002 | 家畜排せつ物管理方法の変更 |
AG-003 | 茶園土壌への硝化抑制剤入り化学肥料又は石灰窒素を含む複合肥料の施肥 |
AG-004 | バイオ炭の農地施用 |
AG-005 | 水稲栽培における中干し期間の延長 |
AG-006 | 肉用牛へのバイパスアミノ酸の給餌 |
出典:J-クレジット制度WEBサイト