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海外論文紹介

バイオ炭は土の中で何年分解されないの?

海外論文紹介

 バイオ炭は何年土の中で安定なのか(分解されないのか)?という議論は相当以前からあり、私たちバイオ炭関係者でもその問いへの回答は曖昧のままでした。「1万年前の遺跡から炭が出土されているので、短くとも1万年はもつでしょう。」などと無責任なことを言うこともあります。

 しかし、近年になり公的な指標が示されました。IPCCがバイオ炭の「土壌の中で分解せずに残存する期間」を「100年」と明示しました。(2019 Refinement to the 2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventories, Appendix 4)。この考え方は、「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」や、J-クレジット方法論「AG004 バイオ炭の農地施用」でも踏襲されています。このような中、今年(2024年)になってから、興味深い論文が発表されました。そこには、「ある温度帯以上で作られたバイオ炭は、1億年以上は土壌中で 分解されない」という内容が示されています。デンマークの地質学者、Hamed Sanei教授らが投稿した論文「Assessing biochar’s permanence : An inertinite benchmark」には、石炭を構成する組織のひとつであるinertinite は、化学的に不活性で容易に分解されない性質があり、その構造はやや高温(500℃以上)で焼成されたバイオ炭と同様であるとされています。この論文内容は、世界のバイオ炭関係者の間で、大いに議論されることになるものと思います。(文責:小澤史弘)

 

参考:Sanei et.al ”Assessing biochar’s permanence : An inertinite benchmark” International Journal of Coal Geology, Volume 281, 2024.

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166516223002276

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