日本バイオ炭コンソーシアム
ワークショップ開催報告
2023年5月19日にバイオ炭規格研究会・国際炭素クレジット市場研究会合同ワークショップ を開催
バイオ炭規格研究会・国際炭素クレジット市場研究会合同ワークショップ
日 時:2023年5月19日(金) 15:00-17:45
場 所:立命館大学東京キャンパス、オンラインのハイブリッド開催
登壇者:岸本 文紅 (農業・食品産業技術総合研究機構 気候変動緩和策研究領域・上級研究員)
栗本 康司 (秋田県立大学木材高度加工研究所・教授)
美濃出 俊司 (フォレストエナジー株式会社プロジェクトマネジメント部・マネジャー)
沖森 泰行 (立命館大学日本バイオ炭研究センター 客員研究員)
ワークショップ概要:
最初に、立命館大の沖森氏から今回の合同企画開催について、次の趣旨説明がありました。バイオ炭の規格というのは、米国のIBIや欧州のEBAが先導してきており、日本はそれに追随する構図ですが、元々、日本は独自にバイオ炭の規格やビジネス展開がありましたので、日本の方法を国際的な標準と整合性を取る必要がありました。また、ビジネスでは海外でバイオ炭クレジットが急速に展開しつつあり、その制度の信頼性や透明性を保つためにも、このバイオ炭規格が根底にあります。両研究会にはそのような共通軸がありますので、それを取り出してみました。
第1部のバイオ炭規格:
ここ数年来、日本の研究者の中で日本版の新しいバイオ炭規格をつくりあげる努力がされています。その研究成果と今後の課題について、2人の研究者に講演して戴きました。 岸本氏は「バイオ炭規格に関わる国際的な動向について」という演題で、バイオ炭規格を作成してきたIBI(International Biochar Initiative)とEBC(European Biochar Certificate)の内容と経緯や国際機関IPCCのバイオ炭のガイドラインをもとに、バイオ炭規格が目指すべき特性を日本の規格と比較して詳細にお話ししていただきました。
栗本氏は「日本版バイオ炭規格の構築の現状」という演題で、竹炭研究をもとに、バイオ炭の含有炭素率の評価方法の再検討や、安全基準とメタンの発生量など最近の課題も取り入れて、岸本氏が説明した国際的な流れの中で、日本版バイオ炭規格をまとめる方向性を示していただきました。会場からは、工業分析法との関わりや、製炭法の違いによる影響などの質疑があり、日本版規格についての期待が寄せられました。
第2部の国際炭素クレジット市場:
Puro.earthなど欧州の炭素クレジット市場はASEAN諸国にも進出しつつありますが、それらの認証の仕組みは、日本のJ-クレジット制度と異なる点が多々あります。フォレストエナジー(株)は、バイオ炭において欧州のボランタリー炭素クレジットの認証を日本で初めて受けました。同社の美濃出氏からは、同社が目指す木質エネルギー事業の全体像と木質ガス化施設や、炭素クレジットの位置づけとCarbonfuture認証方法で日本と異なる点や課題などを、演者の苦心した経験を交えてお話しいただきました。
沖森氏は、会員企業の中で既に欧州のボランタリーカーボン取引法人と接触のあるいくつかの事例を踏まえて、 彼らの炭素クレジット認証の仕組みと日本との主な相違点を概説していただきました。会場からは海外のバイオ炭クレジットの仕組みや建材利用と農業利用との違いについて多数の質問があり、関心の高さが示されました。
(文:高橋幸秀、沖森泰行)