日本バイオ炭コンソーシアム
ワークショップ開催報告
公園緑地・緑地帯研究会とバイオ炭製造・農地施用研究会の合同ワークショップを開催
下記の概要で、公園緑地・緑地帯研究会とバイオ炭製造・農地施用研究会の合同ワークショップを開催しました(運営責任者・沖森泰行客員教授)。
日 時:2024年8月27日(火) 13:30-16:30
場 所:立命館大学東京キャンパス/オンライン(ハイブリッド開催)
参加者:現地31名・オンライン45名
登壇者:
吉竹晋平氏(早稲田大学 教育・総合科学学術院 准教授)
「落葉広葉樹二次林へのバイオ炭施用と生態系応答」
友常満利 氏(玉川大学 農学部 環境農学科 生態系科学領域 准教授)
「玉川学園におけるバイオ炭を活用した環境教育;都市緑地の管理と炭素隔離」
岸本亨氏(立命館大学・日本バイオ炭研究センター 客員教授)
「バイオ炭の施用が生物多様性に及ぼす影響について」
藤原保之氏(宮崎みどり製薬株式会社 営業部ネッカリッチ事業推進室 室長)
「バイオ炭が及ぼす炭酸同化作用」
J-クレジット制度では現在、バイオ炭施用の対象は農地にしか認められておりませんが、私達はその対象が公園や緑地帯にも拡大されることを望んでいます。そのためにはバイオ炭を樹林地に施用した時に、その樹木や森林にどのような影響があるのかを知ることが課題です。
吉竹晋平氏(早稲田大学)からは、落葉広葉樹二次林へバイオ炭を施用した際に、森林生態系での炭素の収支、すなわち植物が光合成によって大気中のCO2を吸収・固定する量と、落葉・枯死したバイオマスが微生物によって分解される際に放出されるCO2量の差分が、バイオ炭を施用しない場合と比較してどちらがCO2削減効果があるかの研究結果についてお話いただきました。
同じく生態系生態学を専門とする友常満利氏(玉川大学)からは、都市の中で自然環境に恵まれたキャンパスを持つ玉川学園で、緑地剪定枝の有効活用としてバイオ炭にした場合に環境教育活動としての意義と、循環型都市緑地のあり方についての課題についてご紹介いただきました。
また、樹木や森林への影響の1つに生物多様性があり、この分野は近年では地球温暖化と併せて議論されるようになりました。バイオ炭の施用と生物多様性の関係についても議論が始まっていますが、まだ研究はほとんど進んでいません。
岸本亨氏(立命館大学)からは、生物多様性とは何かを紐解いてもらい、現時点での課題と政策を整理してもらいました。バイオ炭の製造・施用によって生物多様性には直接的影響と間接的影響が認められ、それを具体的に研究すれば複数の環境課題を同時に対処できる可能性があるとの示唆がありました。
バイオ炭の農地施用への効果につきましては、会員の皆さんからの関心が高いので、機会ある毎に話題を提供したいと考えております。
藤原保之氏(宮崎みどり製薬株式会社)からは、自社で開発した広葉樹の樹皮炭と木酢液を混合して製造した混合飼料(ネッカリッチ)が、地元の保安林地に施用された事例や、畜産の飼料添加剤および野菜栽培の土壌改良材として全国で使用されてきた実績、農家の気候変動対策にどう効果があるのかについて現場の新鮮な事例をお話しいただきました。
(文責:土井美奈子)