日本バイオ炭コンソーシアム
ワークショップ開催報告
2023年5月12日にワークショップを開催
日時:2023年5月12日(金) 16:00-17:45
場所:立命館大学東京キャンパス、オンラインのハイブリッド開催
登壇者:田中 秀門(一般社団法人かめおかコンベンションビューロー 専務理事、元亀岡市職員)
柴田 晃(立命館大学OIC総合研究機構 客員教授、日本バイオ炭研究センター長)
大石 尚子(龍谷大学政策学部 准教授)
ワークショップ概要:
京都府亀岡市は、2008年より周辺大学や地元関係機関などと連携して、バイオ炭の炭素貯留の活動をはじめました。放置竹林の竹などで作ったバイオ炭による炭素貯留を通じて、温室効果ガス削減と地域活性化を両立させる社会システムの構築を目指すものです。地域の未利用バイオマス(放置竹林竹や間伐材)を用いてバイオ炭を生成し、それを土壌改良剤として農地に埋めます。そして、その農地で育てた野菜(通称クルベジ)の普及促進に向け、地元スーパーでの販売、環境教育・食育として保育所・小学校での紹介等を行ってきました。
今回のワークショップでは亀岡市の取り組みに関わっておられる3名の方にお話を伺いました。
まず行政の立場から、クルベジの仕組みづくりに尽力された田中氏から、2008年から現在までの経緯をお話しいただきました。亀岡市と周辺大学との連携協定の締結、亀岡クルベジ育成会の組織化、地元スーパーでのクルベジ野菜の販売までの成功体験・苦労話を忌憚なく共有していただきました。
続いて長年にわたりバイオ炭の研究を行いながら自治体と連携して社会実装を推進された立命館大学の柴田氏から、田中氏との出会いや、目標とする都市部から農村部への資金の流れの仕組み、バイオ炭の農地施用が地球温暖化対策・炭素貯留につながる仕組みなど俯瞰的な視点でのお話をいただきました。
最後に大学のPBL(Project Based Learning)の授業で亀岡市と連携しながらクルベジを通じた食育・環境教育の普及に取り組んでいる大石氏より、これまでの授業で実施した事業について紹介いただきました。地元の小学校での授業や、高校生と連携したプロジェクトなど地域との関わりを紹介いただきました。
(文:土井美奈子)
<ワークショップを終えて>
バイオ炭活用による温暖化防止に資するカーボンマイナスの社会実装の拡大に向けて、地域振興・農業振興を視野にいれて、地域特性や参加者の有する資源に応じた多様な価値を創造する地域モデルを創出する必要があります。本研究会は、具体的な地域モデルの有効性や改善点を探索し、他地域において参考となる水平展開可能なモデルを明らかにして社会実装を推進することを目的として立ち上げました。 今回、亀岡市の事例について、産官学の視点から、率直に実状を共有いただきました。うまくいったこと、そして実際のところ、多くの問題や課題に直面していたことが印象的です。田中氏の他地域への提言について、環境政策のみにこだわらず、地方創生といった大きな枠組みから様々な部門の社会課題を多面的に同時に解決していくことを意識して、関連部門や連携パートナーらと横断的に連携することの大切さを理解しました。また事業の継続性の観点から、政策(助成等)に頼りすぎずに、参画者で共通目標としてのベクトル合わせや経済性、関係性を積み上げることの大切さも改めて意識されます。教育観点から、学生たちのリアリティを感じる現場経験になっていることも印象的です。 本研究会では、他地域における実装検討と比較検討しながら、より理解を深めていきたいと思います。重ねて登壇者の皆様に感謝申し上げます。
(文:依田祐一)