
日本バイオ炭コンソーシアム
インドネシアでのセミナー開催報告
インドネシア国トリブアナ大学(マラン市)でバイオ炭国際セミナーが開催

インドネシア国トリブアナ大学(マラン市)でバイオ炭国際セミナーが開催
客員教授・沖森泰行
2024年6月3日に、インドネシア国マラン市(ジャワ島東部)のトリブアナ大学(Tribhuwana University)で、バイオ炭国際セミナーが開催されました。主催はインドネシアバイオ炭協会(IBA)とトリブアナ大学で、セミナーの課題として「炭素隔離貯留によって持続可能な発展に資するバイオ炭」が掲げられ、それに応じて次のような3人の基調講演が行われました:「バイオ炭による持続的発展」「バイオ炭による炭素の隔離・貯留」そして「バイオ炭によるESG貢献」。沖森は基調講演者の一人として招かれ、「バイオ炭によるESG貢献」を講演してきました(写真1)。

まず驚いたのは参加者が145人もあり(写真2)、その多くがIBAの会員だということです。IBAは2012年に設立され、初代会長はトリブアナ大学の元副学長のDr. Wani H. Utomo名誉教授で、事務局長は同大学の現副学長Dr. Widowati教授でした。Dr. Widowati氏は本国際セミナーの運営事務局長も担い(写真3)、英語も堪能で素早く実務をこなす有能な方です。専門は土壌学で、そこからバイオ炭に興味をもたれたようです。IBAの運営には同大学の先生方が多く入っておられることから、同大学がIBAの中心であることを感じました。
また、IBAの組織図を見せてもらいましたが、インドネシアは多くの群島で構成されてますので、島ごとに10地域に区分しそれらに担当者を配置してました。実際にどの程度機能しているかは不明ですが、少なくとも全国活動を視野に入れて担当者を列挙できていることは先進的です。
本セミナーの基調講演者の一人に、隣国マレーシアから名門マラヤ大学の理学部Dr.Rosazlin Abdullah准教授が招かれていまして、土壌学研究者です。彼女はマレーシアバイオ炭協会の幹部でもあり、マレーシアバイオ炭協会とIBAは不定期ですが、交流会を開いており情報交換は行っていると言ってました。ASEAN諸国の中でバイオ炭普及の組織が連絡を取りあっているようで、私達も早くASEAN諸国にアンテナを張る必要性を感じました。

トリブアナ大学が炭化実験施設をもってると言うので、セミナーの翌日に見学してきました。
工学部長Dr.Hestiが案内してくれました。工業化学科が熱分解装置を設置しており、小型電気炉とバッチ式炭化炉がありました(写真4)。実験用には電気炉を使っており、炭化温度800℃まで細かく温度設定できます。炭化炉は容量0.25m3、最高温度500℃まで可能で、基本は自燃式です。
ここでは、熱帯の多様なバイオマス種類の炭化試験を行っており、樹木や木の実、果皮(ドリアン、バナナ、ジャックフルーツ)、農業残渣のトウモロコシの芯、キャッサバ茎など(写真5)。
また、木酢液の利用についても色々と試験していました(写真5)。木酢液を沈殿させて、上澄み液では防虫効果、防腐効果を試験したり、沈殿させたタール底部の重油の燃焼試験も精力的に行っていました。バッチ炉製炭で排出される木酢液はタンクに保管しており、定期的に農家が買いに来て防虫用に利用しているとの話しには驚きました。
インドネシア国には多くの大学があり、名門国立大学もありますが、熱分解装置を導入して様々な炭化試験を行っているのはトリブアナ大学だけであると、Dr.Hesti工学部長が力説していたことが非常に印象的でした。


最終日に同大学学長Dr.Eko教授に呼ばれて、副学長、学部長らと談話会を行いました。彼らからは、インドネシア国東部の広大な群島は低経済地域で、同大学は設立以来、その地域の若者を対象に教育・研究に多大な力を入れてきたが、地方の私立大学では教育・研究の質に課題があり、この質の向上を強く望んでいる、との話がありました。
これを機会にぜひ立命館大学とバイオ炭を中心としながら、幅広く教育・研究の質向上の協力を進めたいとの要望を受けました。
